超音波医学
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特集「超音波測定技術の進歩」
サーモカメラによる生体ファントム内の温度上昇の可視化
土屋 健伸清水 一磨遠藤 信行
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2016 年 43 巻 2 号 p. 241-254

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抄録

今日,超音波診断装置は広く普及し,医療現場,特に産婦人科領域では必要不可欠なものとなっている.しかし,診断対象領域の拡大や診断装置の性能を向上する目的での照射超音波の高周波化・高出力化に伴い,超音波装置の安全性を検証するための研究が世界中で実施されている.日本超音波医学会でも機器及び安全に関する委員会を中心に安全性についての検討や実験が実施されており,近年では音響放射圧を用いたイメージング装置の生体への影響について,多方面の検討が実施されている.そこで,本報告では赤外線カメラを用いた熱画像法による測定システムを構築し,IEC 60601-2-37を参考に製作した分割ファントムを用い,その断面の2次元温度分布測定を行った結果について報告する.初めに,温度分布と照射超音波出力の関係性を求めた.さらに,超音波の伝搬方向に擬似骨(アクリル)がある場合とない場合について温度上昇実験を行った.この結果,超音波の反射が骨ならびに骨近傍の温度を上昇させる現象を可視化することができた.次に,従来法の熱電対による測定結果と比較し,熱画像法の妥当性について検討した.さらに,数値シミュレーションを行って熱画像法の測定結果と比較することで,さらなる妥当性を検討した.使用が容易なシミュレーションプログラムを作成することで,臨床医による体内温度分布の予測も可能となり,安全性の確立や啓蒙に役立つと考える.

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© 2015 一般社団法人 日本超音波医学会
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