超音波医学
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特集「産婦人科超音波の新技術」
位相差トラッキング法
宮下 進室月 淳室本 仁小澤 克典長谷川 英之金井 浩
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2016 年 43 巻 3 号 p. 483-490

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抄録

位相差トラッキング法(phased-tracking method)は,東北大学大学院工学研究科の金井らにより開発された,微細な運動計測を可能とする次世代の超音波計測モードである.超音波探触子からの送受信により,運動している関心点の変位を観測するためには,受信信号のフレーム間の受信遅延時間の変化を検出する必要がある.位相差トラッキング法では受信した超音波RF信号の直交検波信号に相関法を適用して受信信号の位相偏移を推定することで受信信号の遅延時間の変化を高精度に検出し,関心点の微細な運動計測と追跡が可能となる.この方法では波長の制限を受けないため,高精度での計測が可能である.非侵襲的な高精度計測という特性を活かして,成人領域では動脈壁の弾性特性の推定などに応用されており,今後は胎児の循環動態評価に応用が期待される.筆者らは正常および発育不全胎児における下行大動脈の血管内径変動と,脈波伝播速度計測に位相差トラッキング法を応用し,さらに脈圧推定を試みた.発育不全胎児では脈波伝播速度と推定脈圧は有意に大きく,胎児期からの血管壁構造リモデリングによる壁特性(コンプライアンス)の変化を観察している可能性が示唆された.

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© 2015 一般社団法人 日本超音波医学会
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