超音波医学
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特集「産婦人科超音波の新技術」
経会陰超音波
木戸 浩一郎Barbera Antonio梁 栄治綾部 琢哉
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2016 年 43 巻 3 号 p. 443-455

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抄録
経会陰超音波は,会陰部に超音波の探触子(プローブ)をあてて,体腔内を観察する超音波検査手法である.1970‐80年代から泌尿器科領域で利用されていた手法であるが,近年,産婦人科領域でも活用されつつある.本法は肛門括約筋を含む骨盤底や,経腟分娩時に産道を下降する胎児の児頭,の描出に優れており尿失禁,分娩進行,産褥の肛門括約筋の損傷,などの評価に利用されつつある.超音波検査という特性上,診察室,陣痛室,分娩室で非侵襲的に簡便に施行可能で,動画を含めて画像という形で保存可能なため,単に静的・形態的面だけではなく動的・機能的の評価を客観に行える.骨盤底を明瞭に描出することで,尿道過運動・内因性括約筋不全を評価することが可能で,女性に多い腹圧性尿失禁・切迫性尿失禁の診断に有用で,治療の経過観察にも利用される.また,分娩時には恥骨と児頭との位置関係を描出することにより,児頭下降を経時的に客観的に評価し分娩進行の評価に利用される.3D超音波では児頭の回旋も描出することが可能であり,回旋異常の診断も可能とする報告もある.従来の内診と同等に有用とする報告もある.また産褥の肛門括約筋を描出する研究では,従来考えられていたよりも,肛門括約筋の損傷が高頻度に発生する可能性が指摘されている.経腹・経腟超音波検査の基本的な経験と骨盤底の解剖学的知識があれば,本法の実施と解釈は比較的容易であるため,今後,産婦人科領域で広く普及することが期待される.
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© 2016 一般社団法人 日本超音波医学会
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