超音波医学
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原著
脂肪肝実質に出現する“簾状エコー”の発生機序に関する考察
神山 直久住野 泰清丸山 憲一松清 靖和久井 紀貴篠原 正夫
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2016 年 43 巻 5 号 p. 655-662

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抄録
目的:高度の脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎の症例において,B-mode像に複数観察される,線状の低エコーアーチファクト,いわゆる「簾状エコー」について発生機序の解明を行うこと.対象と方法:はじめに,簾状エコーの可能性がある音響陰影アーチファクト6種類を定義し,脂肪肝症例21例(うち高度脂肪肝9例)に対して記録されたB-mode画像を元に,種類ごとの発生機序を特定する.また対象症例に対し病理診断にて脂肪割合と線維化スコアを得る.さらに,グラファイトファントムの空隙に異なる音速の水溶液を注入し,異なる音速を持つ媒質の境界で,屈折による音響陰影が発生することを検証する.結果と考察:簾状エコーは,肝臓内血管断面から発生している,という仮説が最も適合した.また簾状エコーに類似した陰影が肝外からも発生していることも判明したが,最大輝度保持法を利用したB-mode再構成により両者の判別が可能となった.ファントム実験では,音速値が2.6%低い媒質間においても音響陰影の発生が観察され,これは高度脂肪肝における肝臓実質の音速低下のレベルに同程度であることが考察できた.結論:高度脂肪肝により音速が低下した肝実質と血管内血液間の屈折現象が,簾状エコー発生の一つの主要な原因であることが明らかとなった.
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© 2016 一般社団法人 日本超音波医学会
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