超音波医学
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症例報告
Selective Intrauterine Growth Restrictionに合併し動脈動脈吻合を認めた双胎貧血多血症候群の1例
江夏 国宏日高 庸博城戸 咲村田 将春藤田 恭之加藤 聖子
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2017 年 44 巻 2 号 p. 185-189

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抄録
双胎貧血多血症候群 (TAPS) は胎盤表面に細い数本の動脈静脈(AV)吻合を有することがその特徴で,動脈動脈(AA)吻合を認めることは稀である.今回我々は,胎盤表面に1本のAA吻合と2本のAV吻合を有するTAPS症例を経験した.妊娠34週に一児の胎児発育不全を認め,妊娠35週に中大脳動脈血流速度の異常から発育不全児を供血児,正常発育児を受血児とするTAPSと診断した.胎児心拍数陣痛図で貧血児に繰り返す遅発一過性徐脈を認めたため,緊急帝王切開術を施行した.発育不全児の出生体重は1,762 gで,外観は貧血様で血清ヘモグロビン値は4.2 g/dl,網赤血球数は220‰であった.正常発育児の出生体重は2,056gで,外観は多血様で血清ヘモグロビン値は21.9 g/dl,網赤血球数は43‰であった.加療の後に両児とも生存退院した.色素を注入後に胎盤上の吻合血管を観察したところ,細いAV吻合を2本認めた以外に1本のAA吻合が存在していた.一絨毛膜胎盤において,AA吻合は一般にAV吻合を介した双胎間の血流移動を代償する方向に働くことが多いと考えられているが,今回の症例により,AA吻合が存在したとしてもTAPSは起こりうることが示された.また,妊娠後期に発症した一絨毛膜二羊膜双胎1児発育不全ではTAPSの合併に留意した経過観察を要する可能性がある.
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© 2017 一般社団法人 日本超音波医学会
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