超音波医学
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原著
パルスHIFUと相変化ナノ液滴を用いた新規腫瘍治療法の開発
蘆田 玲子川畑 健一丸岡 貴司浅見 玲衣吉川 秀樹高倉 玲奈井岡 達也片山 和宏田中 幸子
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2017 年 44 巻 2 号 p. 157-166

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抄録

目的:本研究の目的は,腫瘍の局所治療におけるパルスHIFU(pHIFU)の機械的効果の効率的な生成および抗がん剤による増殖抑制の増強に関して,増感剤としての相変化ナノ液滴(PCND)の効果を検証することである.方法:以下の処置を行った際の,CDF1マウスに移植されたColon26腫瘍組織の増殖抑制効果を評価した.(1)60秒間のpHIFU照射(1.1MHz,3.2kW/cm2,300サイクルおよび50 ms間隔),(2)PCND(1%)の注入,(3)アドリアマイシン(4mg/kg)の注入,(4)PCND注入+pHIFU照射,および(5)PCNDとアドリアマイシンの同時注入+pHIFU照射.結果:腫瘍の増殖において,単独療法群では有意差はみられなかったが,pHIFUとPCNDを組み合わせた群に有意な抑制効果がみられた.Real-time Tissue Elastographyによる観察によって,PCNDはpHIFUによる機械的な組織構造破壊を促進することが示された.さらに,pHIFUとPCNDの組み合わせにアドリアマイシンを併用することで,腫瘍の増殖が2週間抑制され,かつ,30日間の観察期間中,4匹のうち3匹おいてに再増殖が認められなかった.結論:pHIFUとPCNDの組み合わせは,有意な抗腫瘍効果を示したことから,局所進行がんに対する新たな治療法確立に道を開くものである.

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© 2017 一般社団法人 日本超音波医学会
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