超音波医学
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総説
超音波断層検査による甲状腺病変の精査基準
村上 司
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2017 年 44 巻 3 号 p. 253-259

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抄録
結節の良悪性の鑑別は甲状腺疾患の診療において超音波検査の重要な役割のひとつである.甲状腺癌の中で最も多い乳頭癌は超音波断層像上特徴的な所見を示すことが多く,大部分の症例は超音波検査により正確に診断できる.乳頭癌を含む甲状腺悪性腫瘍の超音波所見として形状不整,内部低エコー,境界不明瞭,境界部低エコー帯の欠如,微細高エコー,taller than wideを示す形状,充実性であることなどが報告されており,これらの所見の組み合わせによって悪性であるリスクが評価される.穿刺吸引細胞診は超音波所見から判断される悪性のリスクと結節径とにより判断される.本邦では,径5 mmを超え10 mm以下の充実性結節では超音波断層像に多数の悪性所見を認め悪性が強く疑われる場合に限って穿刺吸引細胞診が推奨されている.10 mmを超え20 mm以下の充実性結節では悪性所見が1項目でも見られる場合,20 mmを超える充実性結節では全例に穿刺吸引細胞診が推奨されている.嚢胞成分が優位な結節では充実部の所見について評価して判断する.米国甲状腺学会や韓国甲状腺放射線医学会の推奨基準では,悪性が疑われる場合は1 cm以上で,悪性の可能性が低い場合は1.5 cm以上で穿刺吸引細胞診が推奨されている.ただし,転移リンパ節や甲状腺外浸潤を疑う所見,遠隔転移の疑いなどの予後因子も考慮して穿刺吸引細胞診の適応を判断すべきである.
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© 2017 公益社団法人 日本超音波医学会
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