2018 年 45 巻 1 号 p. 5-14
電気機械結合係数が1に近い高結合係数圧電単結晶を用いる圧電トランスデューサを題材に,その挙動を,従来のPZT系セラミックを用いる場合と比較すべく,直観的モデル,1次元モデルを用いた解析解,有限要素法に基づく数値計算シミュレーションの3段階にて分析する.その結果,高い結合係数は,トランスデューサの高感度化は無論のこととして,広帯域化に生かされるべきであることが確かめられる.まず,圧電トランスデューサが電極を短絡すると柔らかく振る舞うことを直観的に説明する.この振る舞いは,トランスデューサの電気的インピーダンスの極小値を与える周波数(狭義の共振周波数)が,極大値を与える周波数(反共振周波数)に比べ,圧電効果により低下することと等価であるが,これが,1に近い高い電気機械結合係数が圧電トランスデューサの広帯域化を導く主因であることを説明する.