2018 年 45 巻 3 号 p. 279-286
頭頸部領域には狭い範囲に多くの臓器が密集しており,多彩な疾患が生じる.この領域では病変が体表近くに存在するため,超音波診断が活躍する部位である.頭頸部の超音波検査では,この複雑な解剖を確認しながら病変を検出し診断を進める.非侵襲的で,放射線被曝の心配がないこと,特別な全処置や準備を必要とせず,動画像,血流を見ながら, 歯科治療金属の影響を受けずにリアルタイムに病変や機能を評価できること,超音波ガイド下にインターベンションを行えることなどが頭頸部領域で超音波検査が活用される理由として挙げられる.甲状腺や唾液腺など,特定臓器に限定した超音波検査は古くから行われていたが,頭頸部領域全体を一つの領域として観察することは以前はなかった.しかし,超音波診断装置の進歩により体表に近い浅い部位の画質や血流表示の技術が非常に向上し,プローブの小型・軽量化の結果その操作性が飛躍的に改良されたことも相まって,プローブを大きく動かしながら頸部全体を観察することが極めて容易となった.ただし,頭頸部領域には,下顎骨,鎖骨,甲状軟骨などの硬組織による凹凸があるため,この領域全体を確実に診断するには,ある程度の基礎知識とトレーニングが必要である.頭頸部の超音波検査では,頸部の解剖を意識しつつ的確にプローブを密着させ,再現性と説得力のある超音波画像を記録しながら診断していくことが重要である.