超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
原著
収縮早期伸展運動による心筋虚血メモリー診断の精度
増田 佳純浅沼 俊彦中谷 敏
著者情報
ジャーナル 認証あり

2018 年 45 巻 4 号 p. 433-438

詳細
抄録

目的:Post-systolic shortening(PSS)は心筋虚血改善後もしばらく残存するため,虚血メモリー評価に有用と考えられる.心筋虚血時にはearly systolic lengthening(ESL)も生じるが,近年これをスペックルトラッキング心エコー法で同定できることが明らかになった.虚血再灌流後に生じたESLが虚血メモリーの指標となりうるか検討した.対象と方法:麻酔開胸犬16頭において,左冠動脈回旋枝を2分間閉塞後,再灌流した.閉塞前,閉塞時,再灌流10,30分後において,円周方向ストレインを解析した.虚血領域と非虚血領域の収縮期最大ストレイン(εS),post-systolic index(PSI),ESLのストレイン振幅(εESL)および,ESLの持続時間(ESL時間)を計測した.結果:虚血領域において,εSは一旦低下,εESLは増加するものの再灌流後速やかに元の値に回復した.一方,PSI,ESL時間は閉塞時に高値を示し,再灌流10分後も閉塞前のレベルまで回復しなかった.ROC曲線による再灌流10分後の虚血メモリー診断精度は,ESL時間で感度63%,特異度81%,PSIでは感度94%,特異度94%であった.結語:ESL時間は虚血メモリーの指標となりうる可能性が示唆された.しかし,その診断精度においては,ESL指標に比べ,PSS指標の方が優れていた.

著者関連情報
© 2018 公益社団法人 日本超音波医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top