2019 年 46 巻 4 号 p. 337-345
目的:皮下の極めて浅い領域のスライス方向分解能を改善するため,音響レンズ「狭開口法」を独自に考案し,その有効性を先行研究にて物理的に検証している.本研究では,一般的に普及している単層高周波リニアプローブの狭開口法を利用し,小指伸筋腱の中央索および側索の描出能について検討した.対象と方法:健常者60名の小指伸筋腱を通常走査と狭開口法で走査し,各走査法での描出能を比較した.また,狭開口法による解剖学的構造の描出能と腱描出に対する年齢性別の影響について検討した.結果と考察:狭開口法は通常走査に比べ描出能が高く,臨床的に有用であることがわかった.計測した腱の厚さは中央索が平均0.50 mm,側索が平均0.39 mmであり,MRI画像とほぼ一致したが,個人差が認められた.また,fibrillar pattern一層の厚さは中央索,側索ともに平均0.16 mmであり,プローブ周波数とスライス方向分解能の限界であると考えられた.年齢や性別による腱描出に有意差は認めなかったが,腱の走行や皮下組織構造には個人差が認められた.結論:狭開口法は臨床的に有用な腱描出が可能であることを検証した.