超音波医学
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症例報告
重症大動脈弁狭窄症による心不全で緊急手術が施行された成人大動脈一尖弁の1症例
山崎 正之竹内 陽史郎中桐 啓太郎高岡 理恵吉永 仁香堀家 由貴上西 正子藤田 淳子曽我 文隆志手 淳也
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2020 年 47 巻 5 号 p. 191-195

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抄録

症例は68歳女性,主訴は呼吸苦である.某年4月初旬頃より,咳,発熱が出現,中旬より呼吸苦が出現増悪し起座呼吸のため救急入院した.血液生化学検査でBNP,H-トロポニンの著明な上昇を認め,胸部X線写真は両肺に著明なうっ血像,胸水貯留像を認め,うっ血性心不全が疑われたため,経胸壁心エコー図検査が行われた.経胸壁心エコー図検査では,びまん性に左室壁運動低下を認め,特に後壁および心尖部は高度な壁運動低下を認め,駆出率は23%であった.大動脈弁は弁口面積0.3 cm2と重症大動脈弁狭窄症を認め,大動脈弁逆流は認めなかった.カラードプラ法を併用する事で,弁の交連は6時方向の一ヶ所のみであると判明し一尖弁と診断した.冠動脈造影では有意狭窄は認めず,重症大動脈弁狭窄による心不全と診断された.強心薬および利尿剤による反応は乏しく,心不全の内科コントロールは困難であり緊急手術となった.手術所見でも交連は一ヶ所のみで,弁口は背側に偏位した2×12 mmのスリット状の一尖弁と確定され,上行大動脈置換および大動脈弁置換術が施行された.大動脈弁一尖弁は稀な疾患で,体表からの超音波検査での診断は困難とされる.今回我々は経胸壁心エコー法の所見から大動脈一尖弁と診断し,緊急手術により救命する事ができた貴重な症例を経験したので,ここに報告した.

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© 2020 公益社団法人 日本超音波医学会
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