2003 年 18 巻 3 号 p. 163-165
片肘立ち位において安定性やより広い重心移動の安定域を有することが,片麻痺患者における片肘立ち位を経由した起き上がり動作能力を規定する一因であるとの仮説を立てた。この仮説を証明することを目的に,片麻痺患者17名を対象に片肘立ち位の圧中心軌跡と起き上がり動作時間を測定し,測定値間の関係について検討した。圧中心軌跡の測定は,片肘立ち位で静止した場合(静的条件)と前後方向に上半身を移動した場合(動的条件)とで行い,起き上がり時間は,背臥位から片肘立ち位を経由した動作で測定した。その結果,静的条件と動的条件との間には有意な相関が認められなかった。また,動的条件での重心移動距離と起き上がり動作時間との間に有意な相関が認められた。これにより,起き上がり動作をスムーズに行うためには片肘立ち位でのより広い重心移動の安定域を得ることも重要であり,理学療法介入に加味すべき要素であることが示唆された。