2022 年 49 巻 2 号 p. 171-176
症例は99歳,女性.左乳頭分泌物を主訴に来院し,左乳房A区域の皮膚直下に約1 cm大の有痛性腫瘤を認めた.乳腺超音波検査で嚢胞内腫瘍の形態を呈し,前方境界線の断裂と内部に血流信号を伴っており,嚢胞内癌を疑った.マンモグラフィでは所見を認めなかった.穿刺吸引細胞診で乳管癌疑い(Class Ⅳ)の診断であった.局所麻酔下に乳房部分切除術を施行し,最終病理診断は乳腺多形腺腫であった.また,右乳房には非浸潤性乳管癌が存在したが,生命予後には影響しないと判断し経過観察とした.乳腺多形腺腫は非常にまれな良性腫瘍で,本邦では本症例を含めて20例の報告がある.また,嚢胞内腫瘍の形態を呈した症例は本症例しかなかった.非常にまれな超音波像と考えられたため,文献的考察を加えて報告する.