2017 年 49 巻 1 号 p. 42-45
症例は生後3カ月男児. 発熱, 哺乳不良, 大泉門の膨隆で受診し, 全身状態は不良であった. 髄液細胞数は8/μl, 多核球は2/μlとわずかに増加していたが, 髄液糖66mg/dl, 蛋白28mg/dlともに正常で, 塗抹でも菌体を認めなかった. 抗菌薬を開始し, 翌日に頭部MRIを撮像した. 単純画像は異常がなかったが, 造影fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR) では, 左右前頭葉, 左頭頂葉の髄膜に, 脳表に沿った明瞭な造影効果があり, 近接した一部の硬膜下腔には, 造影効果を伴う液体貯留を認めた. この所見は造影FLAIRでしか確認できなかった. 起因菌不明の細菌性髄膜炎として2剤の抗菌薬を継続した. 8病日のMRIでは造影効果は消失し, 単純FLAIRでも硬膜下水腫が診断しえた. 治療は奏効し, 1歳6カ月現在, 後遺症はない. 乳児の細菌性髄膜炎を症状のみで診断することは困難であり, 発症早期で髄液に異常所見が乏しい場合, 診断に苦慮することがある. 抗菌薬は速やかに開始すべきであるが, 多量の抗菌薬を継続するには根拠が求められる. 造影FLAIRは髄膜の炎症を鋭敏に描出し, 髄膜炎の相補的な診断手法として有用である. さらに硬膜下水腫など強い炎症を早期に証明しうるため, 細菌性髄膜炎の判断材料の一つになりうると考えて報告した.