超音波医学
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症例報告
自然消失をきたした肝細胞癌の1例
上田 直幸河岡 友和浅田 佳奈荒瀬 隆司小林 剛森 馨一大段 秀樹横崎 典哉有廣 光司相方 浩
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2022 年 49 巻 5 号 p. 441-447

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抄録

症例:70歳代の女性.血液検査異常にて当院紹介となった.既往歴はB型慢性肝炎,子宮,卵巣摘出後,高血圧.血液検査結果はAFP 2.5 ng/mlで正常範囲,PIVKA-Ⅱ 216 mAU/mlと高値であったが,手術前日の検査で20 mAU/mlと低下していた.Child-Pugh分類はA(5点).US:S2に14×12 mmの内部は比較的均一で境界明瞭,輪郭不整な低エコーSOLを認めた.明らかな被膜構造は認めなかった.CEUS:動脈優位相では辺縁の濃染を認めたが,実質はhypovascularであった.門脈優位相でも辺縁の濃染は持続していたが実質の濃染は認めなかった.後血管相では全体がdefectされていた.re-perfusion imagingでも同様に辺縁のみの濃染を認めた.CT:単純CTでは淡い低吸収域を認めた.動脈相で淡い早期濃染を認め,後期相では淡い低吸収域を認めた.EOB MRI:T1強調画像でS2に17 mmの肝細胞相で低信号を示すいびつな結節を認めた.血管造影下CT検査:S2に腫瘍濃染を認め,CTAPで17mmの低吸収域を認めた.その一部がCTHAで濃染を認めた.これらの結果より,中分化型肝細胞癌が疑われた.病理所見:壊死巣は線維性被膜を伴い,周囲には慢性炎症細胞や飛沫状組織球の浸潤を認めた.細胞のghostからは肝細胞癌が消失した像と見做された.結語:自然消失をきたしたと考えられた,肝細胞癌に対し造影超音波検査を施行し,特徴的な所見を認めた症例を経験した.

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© 2022 公益社団法人 日本超音波医学会
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