2022 年 49 巻 6 号 p. 527-533
目的:近年超音波(US)検査で小さな乳癌が検出されることが増加してきた.乳房US検診要精検基準ではUS上5 mm以下の腫瘤は基本的に精検不要,形状不整な場合は要精検とすることになっているが,小さいがために形態の評価が難しい.今回US上5 mm以下の充実性腫瘤として描出された乳癌がどのように検出され,どのようなタイプの乳癌であったかを検討し,今後のUS判定に役立てることを目的とした.対象と方法:2016年5月~2021年4月に当院で手術された連続症例のなかで,US画像を確認できた5 mm以下の乳癌症例について,病理組織型,サブタイプ,患者背景,発見契機,US所見などを後方視的に検討した.結果と考察:16名16病変が該当し,組織型は浸潤癌8例,非浸潤性乳管癌(DCIS)8例であった.すべて無自覚で,検診やサーベイランス,術前検査における偶発病変であった.浸潤所見をとらえられた症例はすべて浸潤癌であった.遺伝性乳癌卵巣癌症候群症例を除くと,いずれも悪性度の低いホルモンレセプター陽性の乳癌であり,次の検診で検出したとしても生命予後に影響のない乳癌である可能性が示された.結論:5 mm以下の腫瘤でもUS上の浸潤所見は正確に浸潤癌を判定できた.浸潤所見のない5 mm以下の腫瘤は,日本乳腺甲状腺超音波医学会の診断樹では基本的に精検不要とされるが,今回の結果でも平均的リスクの場合,すべて低悪性度のDCISであった.今後,過剰診断,過剰治療についても考える必要があるといえる.