超音波医学
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症例報告
原発性乳癌との鑑別を要した甲状腺未分化癌乳房転移の1例
竹内 直人井口 研子澤 文松尾 知平岡崎 舞橋本 幸枝坂東 裕子近藤 譲原 尚人
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ジャーナル 認証あり

2023 年 50 巻 6 号 p. 409-416

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抄録

症例は50代女性.甲状腺乳頭癌の診断で当院当科へ紹介受診となり,全身検索目的のPET-CTでFDG集積を伴う右乳房腫瘤ならびに多臓器転移を認め,乳癌との重複癌が疑われた.視触診で右乳頭直下に1cmの弾性硬腫瘤を触知,乳房超音波検査で右乳房中央部領域深部に長径10mm,境界明瞭平滑,血流豊富な楕円形低エコー腫瘤を認めた.同病変に対して針生検を施行し,組織型は評価困難であったが,免疫組織化学的検討により,甲状腺乳頭癌乳房転移と診断した.待機的に手術を予定していたが,急激な病勢の進行を認め,緊急で甲状腺全摘術+気管切開術を施行した.術後病理で甲状腺腫瘍は甲状腺未分化癌と診断され,また右乳房腫瘤は最終的な病理診断には至らなかったが,急激な転帰ならびに画像上転移性腫瘍に矛盾しない所見があったことからも,甲状腺未分化癌乳房転移の診断が適切と考えられた.他臓器悪性腫瘍の乳房転移は非常に稀であり,また本症例では乳房腫瘤の確定診断に苦慮した.転移性乳房腫瘍の画像的特徴に加えて,原発腫瘍の画像的特徴も考慮し,総合的に判断することが肝要と考える.

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© 2023 公益社団法人 日本超音波医学会
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