超音波医学
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症例報告
クッシング症候群の若年女性における術後心形態および心機能の変化
山根 彩加藤 雅也松井 翔吾永井 道明香川 英介國田 英司小田 登
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2023 年 50 巻 6 号 p. 401-407

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抄録

クッシング症候群は左室肥大を来たし心血管リスクが高い疾患であり,その病態は未だ明らかになっていない点が多い.今回,副腎腺腫によるクッシング症候群患者における術前術後の心形態および心機能の経時的変化を経胸壁心臓超音波検査にて観察した1例を報告する.症例は30歳女性.難治性高血圧のため紹介受診した.心臓超音波検査では左室壁厚14 mm,左室心筋重量係数120g/m2 Relative wall thickness 0.76と著明な求心性肥大所見を認めた.二次性高血圧を疑い各種ホルモン検査を行った.血中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は抑制され,血中コルチゾール値は正常範囲であった.入院精査を行ったところ夜間コルチゾール高値,副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン負荷試験にてACTH無反応,1 mgデキサメタゾン抑制試験にて血中コルチゾールは抑制されずコルチゾール自律性分泌を認めた.満月様顔貌,高血圧,月経異常,耐糖能異常のクッシング徴候を認め,クッシング症候群と診断した.また,腹部CTにて左副腎腺腫を疑う腫瘤を認めた.131I-アドステロールシンチを行い,左副腎腫瘍に局在する集積を認めたため,腹腔鏡下左副腎摘除術を行った.術後早期は心形態の改善に乏しく高血圧も持続していたが,徐々に心肥大所見の改善を認め,術後2年でほぼ正常化に至った.

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© 2023 公益社団法人 日本超音波医学会
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