超音波医学
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50 巻, 6 号
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総説
  • 新田 尚隆
    2023 年 50 巻 6 号 p. 381-393
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    [早期公開] 公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり

    超音波診断は,X線のように被ばくすることがなく,胎児診断にも使えるような高い非侵襲性と安全性を有する診断法である.また超音波プローブを体表に当てるだけで生体の断層画像を取得することができる簡便性,装置の小型化が可能な可搬性も有し,ベッドサイドや手術現場での検査も容易に行うことができる.さらに心臓や血流など可動組織の観察のリアルタイム性にも優れ,臨床現場では欠かせない診断法となっている.Bモード(Brightness mode)は,超音波診断において最も基本的な画像診断モードである.生体組織内における複雑な波動伝搬様態を反映したBモード画像を正しく読影するためには,パルスエコー法に基づく画像形成の原理や画像の分解能,アーチファクトの発生メカニズムについて理解することが重要である.本稿では特にこれらをピックアップし,実験結果を交えて概説する.またBモードイメージングにおける新たな展開についても触れる.

  • 南 康範, 工藤 正俊
    2023 年 50 巻 6 号 p. 395-400
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    [早期公開] 公開日: 2023/09/05
    ジャーナル 認証あり

    造影超音波は高感度に血流シグナルを検出できることから活動性のある腫瘍部位を同定できる有用な検査であるが,組織レベルの血流量や微細な血流速度を定量的に測定することは困難である.そのため,造影超音波による血流定量の試みとしてtime intensity curveのパラメータ比較による報告がなされており,そのtime intensity curve解析の主なものとしてwash-in and wash-out curveとflash replenishment curveがある.ただし,計測で用いる関心領域の位置や大きさによって輝度値が大きく変動することは超音波検査の宿命であり,観察時間の長さによってパラメータに誤差が生じる得るリスクはcurve fittingでは避けられない.さらに,パラメータ比較では実際にどれだけの血流変化を表しているのかを臨床医が想像し難いという根本的な問題がある.一方,新しく発表されたContrast Vector Imaging®は造影剤バブルの軌跡を画像解析することで局所組織における血流速度を直接計測することができる画期的な画像技術である.造影超音波による血流定量の評価法が確立されれば,腫瘍の鑑別診断や化学療法の早期効果予測に大きく貢献するものと期待される.

症例報告
  • 山根 彩, 加藤 雅也, 松井 翔吾, 永井 道明, 香川 英介, 國田 英司, 小田 登
    2023 年 50 巻 6 号 p. 401-407
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    [早期公開] 公開日: 2023/10/13
    ジャーナル 認証あり

    クッシング症候群は左室肥大を来たし心血管リスクが高い疾患であり,その病態は未だ明らかになっていない点が多い.今回,副腎腺腫によるクッシング症候群患者における術前術後の心形態および心機能の経時的変化を経胸壁心臓超音波検査にて観察した1例を報告する.症例は30歳女性.難治性高血圧のため紹介受診した.心臓超音波検査では左室壁厚14 mm,左室心筋重量係数120g/m2 Relative wall thickness 0.76と著明な求心性肥大所見を認めた.二次性高血圧を疑い各種ホルモン検査を行った.血中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は抑制され,血中コルチゾール値は正常範囲であった.入院精査を行ったところ夜間コルチゾール高値,副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン負荷試験にてACTH無反応,1 mgデキサメタゾン抑制試験にて血中コルチゾールは抑制されずコルチゾール自律性分泌を認めた.満月様顔貌,高血圧,月経異常,耐糖能異常のクッシング徴候を認め,クッシング症候群と診断した.また,腹部CTにて左副腎腺腫を疑う腫瘤を認めた.131I-アドステロールシンチを行い,左副腎腫瘍に局在する集積を認めたため,腹腔鏡下左副腎摘除術を行った.術後早期は心形態の改善に乏しく高血圧も持続していたが,徐々に心肥大所見の改善を認め,術後2年でほぼ正常化に至った.

  • 竹内 直人, 井口 研子, 澤 文, 松尾 知平, 岡崎 舞, 橋本 幸枝, 坂東 裕子, 近藤 譲, 原 尚人
    2023 年 50 巻 6 号 p. 409-416
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/13
    [早期公開] 公開日: 2023/09/12
    ジャーナル 認証あり

    症例は50代女性.甲状腺乳頭癌の診断で当院当科へ紹介受診となり,全身検索目的のPET-CTでFDG集積を伴う右乳房腫瘤ならびに多臓器転移を認め,乳癌との重複癌が疑われた.視触診で右乳頭直下に1cmの弾性硬腫瘤を触知,乳房超音波検査で右乳房中央部領域深部に長径10mm,境界明瞭平滑,血流豊富な楕円形低エコー腫瘤を認めた.同病変に対して針生検を施行し,組織型は評価困難であったが,免疫組織化学的検討により,甲状腺乳頭癌乳房転移と診断した.待機的に手術を予定していたが,急激な病勢の進行を認め,緊急で甲状腺全摘術+気管切開術を施行した.術後病理で甲状腺腫瘍は甲状腺未分化癌と診断され,また右乳房腫瘤は最終的な病理診断には至らなかったが,急激な転帰ならびに画像上転移性腫瘍に矛盾しない所見があったことからも,甲状腺未分化癌乳房転移の診断が適切と考えられた.他臓器悪性腫瘍の乳房転移は非常に稀であり,また本症例では乳房腫瘤の確定診断に苦慮した.転移性乳房腫瘍の画像的特徴に加えて,原発腫瘍の画像的特徴も考慮し,総合的に判断することが肝要と考える.

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