2024 年 51 巻 5 号 p. 219-223
脳梗塞の原因として腕頭動脈プラークが塞栓源となることがある.可動性の腕頭動脈プラークを超音波で診断し,MVFIの手法であるSMIを用いて可動性病変が鮮明に描出された症例を経験したため報告する.77歳女性.構音障害,右上肢の運動失調を主訴に来院し,National Institute of Health Stroke Scaleスコア 2点であった.頭部MRIで右小脳半球,橋,左側頭葉に多発性の脳塞栓症を認めた.塞栓源検索目的で行った経食道心エコーで腕頭動脈に可動性プラークを疑い,体表面からセクタプローブで走査したところ腕頭動脈内に可動性プラークを認めた.深度が深く,アーチファクトとの鑑別を要したためSMIを使用したところ,可動性プラークが高信号に明瞭に描出された.同部位を塞栓源と診断し,抗血小板薬を含む内科治療を行った.以後超音波でプラークの形態について経過観察を行っている.SMIは組織の動きの特徴を解析し,低速血流と組織の動きを分離する技術である.SMIで可動性プラークが明瞭となる機序としてモーションアーチファクトにより過可動性を伴うクラッタ運動,反射強度が強い点が考えられている.セクタプローブによる可動性腕頭動脈プラークの評価にSMIは有用であった.