抄録
目的:非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ: DCIS)はエラストグラフィで低いスコアを示すことが多い.その要因について病理組織像を定量的に検討した.対象と方法:2012年1月から2013年8月の間に手術でDCIS と確定診断され,エラストグラフィでItohらによるスコアに分類した18例を対象とした.病理組織像から腫瘍の癌細胞密度,管腔密度を算出しスコアとの相関を検討した.スコア(1‐3)を低スコア群,(4‐5)を高スコア群とし癌細胞密度の差を検討した.腫瘤と非腫瘤性病変に分類し癌細胞密度の差を検討した.結果と考察:スコア2は9例と一番多かった.スコアと癌細胞密度には正の相関を認めたが,スコアと管腔密度には相関は認めなかった.低スコア群は13例で高スコア群とくらべ多数であった.癌細胞密度は,低スコア群の方が低く両者の間に有意な差を認め, 非腫瘤性病変は11例と腫瘤とくらべ多数であった.そして,組織亜型分類ではコメド型が4例,乳頭型が3例,低乳頭型が2例,充実型が2例であった.癌細胞密度は,非腫瘤性病変の方が低く両者の間に有意な差を認めた.DCISは癌細胞密度の低い症例が多く,癌細胞密度が低いと低いスコアを示すことがわかった.結論:癌細胞密度の差はDCISがエラストグラフィで低いスコアを示す要因の一つであると推察できた.