抄録
膵病変はその肉眼像から充実性病変と嚢胞性病変に分類され,充実性病変には膵管癌,神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET),SPN(solid-pseudopapillary neoplasm),腫瘤形成性膵炎などが,嚢胞性病変には漿液性嚢胞性腫瘍(serous cystic neoplasm: SCN),粘液性嚢胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm: MCN),膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)などが含まれる.超音波検査(Ultrasound: US)は膵病変の病理肉眼像を詳細に反映するため,SCNの蜂巣状構造,MCNのcyst in cyst構造,IPMNのcyst by cyst構造などそれぞれの嚢胞性腫瘍に特徴的な構造を理解することは鑑別診断にも有用である.嚢胞性病変の鑑別診断に有用なUS所見には,(1)病変の占居部位,(2)病変の数,(3)輪郭,(4)内部構造,(5)内容液の性状,(6)膵管との交通の有無,(7)充実部分の有無といった所見がある.充実部分の有無は病変の悪性度の評価にも有用である.さらに,5 mm以上の膵嚢胞は膵管癌の高危険群としても認識されており,初診時に精検を行うとともに定期的に経過観察をしていく必要がある.