論文ID: JJMU.R.203
現在肥満や糖尿病が急増していることから,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)の有病率は上昇することが予想され,世界中で慢性肝疾患の主因となっている.肝線維化は,NAFLD患者の長期転帰の悪化と関連がある.さらに,死亡率の上昇と肝疾患の合併症は,主に非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)患者に見られるが,非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)は,良性で比較的進みにくいと考えられている.そのため,NASHとNAFLの鑑別が,臨床的に重要である.肝生検は,肝線維化の病期分類およびNASHとNAFLとの鑑別のゴールドスタンダードとして用いられている.しかしながら,肝生検は侵襲的で,高額な検査法である.したがって,肝線維化の病期分類とNASH診断のために,生検に代わる非侵襲的方法が緊急に必要とされている.本論説では,肝線維化,肝脂肪化および炎症や肝細胞風船様腫大を含む肝障害など,NASHの病理学的所見を反映可能な,磁気共鳴エラストグラフィを含む磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI),プロトン密度脂肪分画測定法,マルチパラメトリックMRI(multiparametric MRI:mpMRI)に関する近年の研究を考察する.