2018 年 10 巻 1 号 p. 8-15
〈ケアリング〉は看護の中核的概念と認識されているが、本質的把握は十分ではない。本研究は、看護における〈ケアリング〉概念の再定位を試みることを目的とした。看護師は患者と向き合う経験を積み重ねて〈実践知〉を形成し、固有の看護実践を自ら作り出す。看護実践が〈実践知〉へ変容するには、〈洞察〉と〈内省〉が不可欠である。看護師を洞察と内省に向かわせるのは、「相手に寄り添いたい、寄り添わねばならない」という患者への思いである。〈ケアリング〉は、看護実践の一部分ではなく、行動と心情が複合的に絡み合って一連の行為として表出された看護実践そのものである。看護における〈ケアリング〉は、患者への能動的な思いや願いを根底にもった〈実践知〉としての看護実践全体である。〈ケアリング〉の基底で〈ケアリング〉を支えているのは、看護師として患者にどう向き合うかということであり、それは看護師としての生き様であるといえる。