本研究は,臨床看護師が認識する倫理的風土を測定する日本語版倫理的風土測定尺度(J-HECS)を開発し,その信頼性と妥当性の検証を目的に行った。調査は,関西圏4病院で働く看護師を対象に300部配布し,184部の回答を得た。確証的因子分析の結果,オリジナル版の26項目では,尺度モデルの適合性が低いことが考えられた。そのため,質問項目が類似していると考えられた8項目を削除し,J-HECSを5因子18項目の構成とし,再分析を行った。その結果,尺度のCronbach’s 係数は0.94であり,高い信頼性が確認された。次に,適合度指標では,AGFI: 0.80,CFI: 0.92,RMSEA: 0.09となり,やや低いが概ねモデルの適合性が示された。また,J-HECSとJMDS-R(日本語改訂版倫理的悩み測定尺度)との間には,負の相関(r = -0.35,ρ<0.01)が観察された。以上により,J-HECSは一定の信頼性と妥当性を備えた尺度であることが確認され,日本語版としての使用可能性が示された。