2020 年 12 巻 1 号 p. 67-72
本研究の目的は,身体抑制の倫理的問題に対する態度とクリティカルシンキングの関連について明らかにすることである。身体抑制の事例を作成し,クリティカルシンキング尺度を用いてA県内の急性期病院10施設の臨床看護師へ無記名自記式質問紙調査を実施した。分析対象者は202名(有効回答率27.0%)であった。「問題の認識」で「問題あり」の群と「道徳判断」で「規則・基準に基づく判断」をした群のクリティカルシンキング尺度得点が有意に高かった。「行動」においては,「身体抑制をする」「しない」「どちらともいえない」の3群間でクリティカルシンキング尺度得点に有意差は認められなかった。臨床看護師はクリティカルシンキングを用いて多面的な「問題の認識」をし、相対的に「道徳判断」をしていた。しかし,「行動」においてはクリティカルシンキングではなく組織倫理に影響を受けている可能性が示唆された。