日本看護倫理学会誌
Online ISSN : 2434-7361
原著論文
治療目的のプラシーボをめぐる倫理的議論の動向:看護職における議論に焦点を当てて
福山 美季浅井 篤
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2022 年 14 巻 1 号 p. 12-20

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抄録

本稿では、看護師がプラシーボの使用に関する倫理的議論の論点を理解するための基礎資料を提供することを目的に、看護職によるプラシーボの使用をめぐる倫理的議論に関する文献検討を行った。文献検討では、英語論文13編と日本語論文5編を対象とした。その結果、患者の自律性の侵害等の倫理的に否定的な理由8つと、プラシーボの効果等の肯定的な理由6つを抽出した。英語論文では、主に倫理的原則の観点から、日本語論文では、プラシーボの効果やケア・徳の倫理の観点から議論が行われていた。日本語論文では、患者の適切な評価・ケアを受ける権利の侵害、患者の尊厳の侵害、医療者による恣意的な使用、ノセボ効果、プラシーボの効果への懐疑、動機は区別しない・できないの6つの理由はほとんどみられなかった。看護師には、プラシーボの使用について、倫理原則やケアの倫理等の様々な観点からの倫理的議論を偏りなく理解する機会が提供される必要がある。

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© 2022 日本看護倫理学会
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