抄録
本研究の目的は、医療現場を離職し長期海外渡航を選択した中堅看護師の離職理由と、長期海外渡航体験が彼らにもたらした意識や行動の変化を明らかにすることである。対象者12名に対して半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。離職理由は、「労働環境の厳しさ」、「新たな職務・役割の追加」、「ワークライフバランスの欠如」、「身体・精神面の負荷」、「看護職として働き続けることの限界」が抽出され、医療現場において強い持続的なストレスを経験し、バーンアウトに近い状態であったと考えられた。帰国後の意識や行動の変化は、「自己の再認識」、「自己基盤の獲得」、「人間理解の深まり」で構成され、自己概念の再構築や人間理解の深まりに影響したものと考えられた。近年では、自我に内在する回復力としての人間の持つ強さ(レジリエンス)が提唱され、長期海外渡航体験はレジリエンスが有効に機能したものと考えられた。