看護科学研究
Online ISSN : 2424-0052
ISSN-L : 2424-0052
17 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著
  • 野崎 由里子, 櫻田 淳, 田上 豊
    2019 年 17 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、医療現場を離職し長期海外渡航を選択した中堅看護師の離職理由と、長期海外渡航体験が彼らにもたらした意識や行動の変化を明らかにすることである。対象者12名に対して半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。離職理由は、「労働環境の厳しさ」、「新たな職務・役割の追加」、「ワークライフバランスの欠如」、「身体・精神面の負荷」、「看護職として働き続けることの限界」が抽出され、医療現場において強い持続的なストレスを経験し、バーンアウトに近い状態であったと考えられた。帰国後の意識や行動の変化は、「自己の再認識」、「自己基盤の獲得」、「人間理解の深まり」で構成され、自己概念の再構築や人間理解の深まりに影響したものと考えられた。近年では、自我に内在する回復力としての人間の持つ強さ(レジリエンス)が提唱され、長期海外渡航体験はレジリエンスが有効に機能したものと考えられた。
研究報告
  • 木下 愛未, 下里 誠二
    2019 年 17 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/26
    ジャーナル フリー
    精神科では、患者の攻撃性がスタッフナースに向けられることがあり、結果スタッフナースが怒りを感じることが知られている。そこで精神科スタッフナース自身の認知傾向(敵意およびパラノイド〈PA〉傾向)、患者から攻撃行動を受けた際のスタッフナースの怒りの強さ、患者の攻撃行動への態度の関連をPearsonの相関係数やstructural equation modeling(SEM)により検証した。スタッフナースに対して質問紙調査を実施し、486名から回答を得た。結果、精神科スタッフナースの怒り感情の喚起に影響を与える個人の特性には、敵意や、PA傾向のうち対人猜疑心および仲間はずれといった認知傾向があることが示唆された。これらの認知傾向は怒り感情の強さに影響を与え、患者の攻撃行動を否定的に捉える看護師のネガティブな態度に影響を与えるものであった。一方で、患者の攻撃行動に対して患者への弱い立場への共感を示す看護師のポジティブな態度は影響が示されなかった。
資料
  • 甲斐 ゆりあ, 安藤 敬子, 清村 紀子
    2019 年 17 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/26
    ジャーナル フリー
    本研究においては、日本の病院における宗教的配慮に関する実態を明らかにすることを目的にWebアンケート調査を実施した。災害拠点病院から2段抽出法で94施設を選択し、このうち有効回答の得られた13施設を分析対象とした。調査において、全世界の人口の約7割を占める3大宗教であるキリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教において宗教的配慮を必要とする22項目についての認識と実施について回答を求めた。加えて、各病院独自の宗教的配慮についての自由記載を求めた。結果、宗教的配慮を必要とする22項目についての認識は高く、特別な食事を必要とする宗教に対する食事の提供は6割以上の施設で実施されているものの、礼拝のための環境整備といった物理的環境の確保は2割〜5 割と差が認められた。グローバル化が進む中、多様な価値観や宗教を持つ人々に対してそれらを踏まえた看護ケアを行っていくためには、より多くの病院で具体的な看護ケアについて検討されていくことが期待される。
feedback
Top