抄録
本研究においては、日本の病院における宗教的配慮に関する実態を明らかにすることを目的にWebアンケート調査を実施した。災害拠点病院から2段抽出法で94施設を選択し、このうち有効回答の得られた13施設を分析対象とした。調査において、全世界の人口の約7割を占める3大宗教であるキリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教において宗教的配慮を必要とする22項目についての認識と実施について回答を求めた。加えて、各病院独自の宗教的配慮についての自由記載を求めた。結果、宗教的配慮を必要とする22項目についての認識は高く、特別な食事を必要とする宗教に対する食事の提供は6割以上の施設で実施されているものの、礼拝のための環境整備といった物理的環境の確保は2割〜5 割と差が認められた。グローバル化が進む中、多様な価値観や宗教を持つ人々に対してそれらを踏まえた看護ケアを行っていくためには、より多くの病院で具体的な看護ケアについて検討されていくことが期待される。