抄録
本研究は当事者の語りを用いた教育実践を概観し、教育方法の特徴を明らかにすることにより、教育実践への示唆を得ることを目的とした。看護基礎教育課程における当事者の語りを用いた教育の報告21篇を分析した結果、当事者参加型授業、2年次の配当がもっとも多かった。当事者は精神疾患、アディクション、がん、難病などの体験者であった。ほとんどの報告が当事者の疾患に関する学習、当事者の情報、当事者への質問の検討などの事前学習、レポートやアンケートなどの事後学習を課していた。当事者参加型授業は当事者の自律的・自立的に社会生活を営む姿や当事者の視点から医療や社会のあり方を学べる方法であり、看護職者としての態度形成につながり得る。一方で、授業のトピックによって学習者の個人的体験や情動を刺激する可能性があり、事前・事後課題、グループ・ワーク、教材選択をトピックに応じて設定することが安全な授業を実施するために有益であると考えられる。