日本腎臓病薬物療法学会誌
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総説
薬剤性腎前性急性腎障害~薬剤性腎性急性腎障害との鑑別と原因薬物について~
平田 純生門脇 大介成田 勇樹
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2013 年 2 巻 3 号 p. 3-12

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抄録

 薬剤性で腎前性の急性腎障害(AKI: acute kidney injury)は薬剤投与によって引き起こされる腎血流の低下あるいは糸球体内圧の低下により糸球体濾過率が低下し、乏尿となる状態である。薬剤性AKI の原因薬物数は薬剤性腎性AKI 原因薬物と比し少ないものの、出血、脱水、ショック、心不全、動脈硬化、高齢者などは腎虚血を助長するリスクファクターであるため、薬剤性腎前性AKI の発症頻度は高いことに注意する必要がある。 また前述のリスク因子のある患者に腎毒性薬剤が投与された場合、腎性AKI か腎前性AKI を見極めることが重要と思われる。血清Cr 値の上昇、尿量の減少はすべてのタイプのAKI の診断基準であるが、腎前性AKI はNa 排泄分画(FENa: fractional excretion of sodium)が1%未満になる、あるいは尿中Na 濃度の低下、尿浸透圧の上昇などで鑑別できるが、これらの検査は実臨床では実施されないことが多いため、腎前性AKI が腎性AKI と混同されやすいことに留意する必要がある。 本論文では腎前性薬剤性のAKI の原因薬物として主にNSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs)、カルシニューリン阻害薬、レニン- アンジオテンシン系阻害薬、利尿薬について記載する。

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© 2013 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
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