日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
原著
PK-PD理論とモンテカルロシミュレーションに基づく高齢者のための カルバペネム系抗菌薬の最適投与計画の構築と評価
志野 訓之内田 享弘吉田 都野村 泰生
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 4 巻 3 号 p. 21-30

詳細
抄録

カルバペネム系抗菌薬(メロペネム(MEPM)、ドリペネム(DRPM))の使用において最適な用法用量を提案するために、モンテカルロ法を利用し、高齢者個々の腎機能に応じて80%の確率で%TAM≧40を達成する投与量・投与間隔を提案できるノモグラムを作成した。市中肺炎で入院した高齢者において、ノモグラムを用いて介入したMEPM投与群35人、DRPM投与群29人とノモグラムなしに治療を実施したMEPM投与群33人、DRPM投与群26人について40%TAM達成率、1日投与量、投与間隔、投与期間、臨床効果、副作用をレトロスペクティブに比較検討した。介入前に較べ介入後は、1日1回投与の患者数が有意に減少し(MEPM;9人→3人 p=0.04、DRPM;8人→0人p<0.01)、また平均1日使用量は、有意に増加した(MEPM; 0.92±0.28g→1.10±0.40g p=0.04、DRPM; 0.46±0.17g→0.53±0.09g p=0.01)。40%TAM達成率も有意に増加した(MEPM;75.8%→94.3% p=0.03、DRPM; 61.5%→90.7% p=0.01)。介入の結果、投与期間が短縮した(MEPM;10.0±3.7日→8.5±3.8日 p=0.04、DRPM; 10.7±3.7日→8.4±3.2日 p=0.03)。体温37度以下が持続するまでの期間は、有意に短くなった(MEPM: 4.5±1.6日→3.9±1.7日p=0.04、DRPM: 4.8±1.7日→4.1±1.6日p=0.04)。また介入後、臨床的失敗も減少した(MEPM; 5人→3人 p=0.4、DRPM; 7人→2人 p=0.04)。介入前後において副作用の発現の頻度に、有意な差は認められなかった。高齢者個々の腎機能に基づき投与量、投与間隔を決定できるノモグラムは、有効であることが示唆された。

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top