本邦における抗菌剤の標準的な投与量は海外より低用量なものが多く、それは透析患者でも同様の傾向が認められる。今回われわれは、腹膜透析患者の出口部感染症においてセファレキシンが国際腹膜透析学会による推奨投与量である1回500 mgを1日2回連日投与された患者を後方視的に調査し、その安全性と有効性について検討した。対象は、2013年1月から2014年12月までに出口部感染症と診断された腹膜透析患者で、セファレキシンを国際腹膜透析学会の推奨投与量である1回500mg、1日2回経口投与された患者とし、患者13名投与機会20回を解析対象とした。調査期間中に複数回の治療が行われた患者についてはそれぞれをカウントした。対象患者の背景は、平均年齢は55.9±14.1歳、平均体重は65.4±18.6kg、平均腹膜透析歴は12.4±12.0ヶ月であった。対象患者の半数弱で起炎菌は同定されておらず、同定されたものではメチシリン感受性の黄色ブドウ球菌が最多で検出されていた。セファレキシンの平均投与期間は20.1±8.7日であった。対象患者での治療効果は有効率95.0%(19/20)と良好な結果が得られていた。治療失敗の内訳は、主治医により無効と判断され抗菌剤の変更となった患者が1名であった。安全性については、投与期間中に主治医がセファレキシンによる副作用であると診療録に明記されていたものとして軽度の下痢が1名あった。検査値異常を示した患者は認められなかった。本研究では、対象群が設定されておらず有効性の評価に関しての限界はあるが、腹膜透析の出口部感染症に対してセファレキシン500 mgを1日2回投与しても明らかな副作用は認められず、安全に投与可能である可能性が示唆された。