日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
原著
Tenofovir disoproxil fumarateによる体表面積未補正eGFR低下の危険因子に関する検討
森 尚義林 雅彦大井 一弥八重 徹司谷口 晴記
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2016 年 5 巻 3 号 p. 17-24

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抄録

緒言:Tenofovir disoproxil fumarate(TDF)は、腎機能に応じた投与方法の目安が添付文書に記載されているが、投与量の減量ではなく投与間隔の延長であり、服薬アドヒアランスを高く維持することが困難となっているのが現状である。実際に、体表面積未補正推算糸球体濾過値(未補正eGFR)の低下によるTDF配合剤の投与中止例が散見されたことから、TDF配合剤投与開始時の未補正eGFRに着目し、未補正eGFRの低下との関連について調査した。方法:2005年4月から2014年3月までに三重県立総合医療センターでTDF配合剤を含む多剤併用療法を開始したHIV感染症患者のうち、全ての経過を後方視的に確認できた21例を対象とした。患者をTDF配合剤開始時未補正eGFRが80 mL/min以上と80 mL/min未満の2群に分けて、患者背景、未補正eGFRの推移などを調査した。結果:TDF配合剤開始時未補正eGFRが80 mL/min以上の群は13例中12例が評価時に通常用量を維持できていたのに対し、TDF配合剤開始時未補正eGFRが80 mL/min未満の群で通常用量を維持できていたのは8例中2例のみであり、両群間で有意差が認められた。また、TDF配合剤減量基準該当群においては、TDF配合剤開始時未補正eGFRの低さとTDF配合剤減量基準該当までの期間の短さに有意な相関が認められた。考察:本検討においては、未補正eGFRが50~80 mL/min程度の患者にTDF配合剤を投与すると未補正eGFRの低下が発現し、早期に減量基準に該当する可能性が高いことが明らかとなった。今後は未補正eGFRが50~80 mL/minの範囲にある患者への薬剤管理指導と、未補正eGFRが50~80 mL/minの範囲の用法用量設定に関するさらなる育薬研究が重要であると考える。

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© 2016 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
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