日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
原著
カルボプラチン・イリノテカン併用療法施行患者における血液毒性の腎機能との関連性の検討
梅原 健吾渡邉 愛武田 香陽子髙山 慎太郎藤田 昭久関根 球一郎下山 哲哉伊藤 邦彦小林 道也佐藤 秀紀
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2017 年 6 巻 3 号 p. 163-170

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抄録

目的:抗がん剤であるイリノテカン塩酸塩水和物(CPT-11)の主な消失経路は肝代謝とされており、これまでに患者の腎機能の違いによるCPT-11の効果や毒性について検討した報告は少ない。近年、腎機能低下モデル動物において、CPT-11の活性代謝物であるSN-38の排泄は正常ラットに比べ遅く、また重度の腎障害のあるがん患者においてもSN-38の消失遅延が報告されている。本研究では、腎機能とCPT-11の副作用発現の関連性を明らかにする目的で、カルボプラチン(CBDCA)+CPT-11併用療法を施行した患者の血液毒性と腎機能との関連性を検討した。結果:CPT-11投与後の白血球数数と好中球数、ならびに男性のヘモグロビン量値は腎機能パラメータと正の相関が見られた。また、クレアチニンクリアランス(CLcr)の重症度と白血球数減少、好中球減少の重症度との間に相関が見られた。しかし、年齢と腎機能パラメータの間に相関性認められていない70歳以上の患者群において、白血球数や好中球数の減少は年齢の増加に依存した。そのため、腎障害の程度が血液毒性に直接関係するのではなく、年齢の増加が交絡因子であることが推測された。考察:腎機能の低下した患者では血液毒性が強まる傾向が見られたが、その原因は加齢による、腎および他の臓器の機能低下によるものと考えられた。しかし、今回の患者はCLcr>30であり、より重度の腎障害のある患者については、今後さらに詳細な検討が必要である。

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© 2017 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
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