2017 年 6 巻 3 号 p. 181-187
ロスバスタチンは、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムとの併用による薬物間相互作用が報告されているが、その詳細は明らかではない。炭酸ランタンは、多価金属であるランタンを含有するため同様に薬物間相互作用が懸念される。そのため、今回HMG-CoA還元酵素阻害薬を服用中に新規に炭酸ランタンの併用を開始した患者29名を対象に調査を行った。本研究は全患者29名を対象に行い、さらに薬物間相互作用の報告のあるロスバスタチン群6名と非ロスバスタチン群23名に分けて行った。結果は、炭酸ランタン併用開始前後の低密度リポ蛋白(LDL)コレステロール値は、全患者において併用前73.0±19.8 mg/dL、併用後72.8±22.6 mg/dL(p=0.498)と有意な変化は認められなかった。これはロスバスタチン群、非ロスバスタチン群でも同様であった。血清リン値は、全患者において併用前6.6±0.9 mg/dL、併用後5.4±1.2 mg/dL(p<0.01)と有意に低下していた。ロスバスタチン群において併用前6.2±0.8 mg/dL、併用後5.0±1.0 mg/dL(p=0.092)と統計学的に有意ではないが、低下傾向が認められた。非ロスバスタチン群において併用前6.7±0.9 mg/dL、併用後5.5±1.2 mg/dL(p<0.01)と有意に低下していた。LDLコレステロール値は検討した対象患者全例でほぼ変化がなく、血清リン値は全患者において低下を確認できた。そのためHMG-CoA還元酵素阻害薬服用中の患者に炭酸ランタンの併用を開始してもHMG-CoA還元酵素阻害薬の臨床効果、炭酸ランタンの臨床効果には影響を及ぼさないことが示唆された。