日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
原著
残腎機能を有する腹膜透析患者におけるバンコマイシンクリアランス推定法の検討
小林 綾子 横山 登英石田 耕太鈴木 憲史
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2019 年 8 巻 2 号 p. 155-162

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抄録

PD患者においてバンコマイシン(VCM)を投与した場合に個人差が大きく、血中濃度管理が困難である。そこで著者らはVCMを経静脈投与した39 例を対象に、腹膜平衡試験(PET)を加味したVCMクリアランス(CLVCM)予測式として、CLVCM(PET)式およびCG式を用いたCLVCM(CG)式の有用性を調査した。固定パラメータVdを1.07 L/kgと仮定し、1-コンパートメント急速静注モデルで各予測血中濃度を算出した。CLVCM(PET)式では残腎とPDのクレアチニンクリアランス(CLcr)を用いCLVCMとCLcrの違いを補正して、CLVCM(PET) =0.715×CLcr(R)+0.22×CLcr(PD)とした。CLVCM(CG)式ではCLVCMがCockcroft-Gault(CG)式で推算したCLcrに0.789を乗じた値と等しいとした。CLVCM(PET)式とCLVCM(CG)式のME、MAE、RMSEはそれぞれME:1.5 μg/mLと-0.2 μg/mL(p <0.001)、MAE:3.8 μg/mLと3.5 μg/mL(p =0.35)、RMSE:5.2 μg/mLと4.6 μg/mL(p =0.20)であった。CLVCM(PET)式では88 %の測定値を、CLVCM(CG)式では79 %の測定値を実測血中濃度の0.67-1.5 倍の範囲で予測した。

検討した2つの方法は共に、PD患者におけるVCM初期投与計画時に有用と考えられるが、CLVCM(CG)式すなわち0.789×CG式の方がより実用的であると示唆された。

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© 2019 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
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