2019 年 8 巻 2 号 p. 155-162
PD患者においてバンコマイシン(VCM)を投与した場合に個人差が大きく、血中濃度管理が困難である。そこで著者らはVCMを経静脈投与した39 例を対象に、腹膜平衡試験(PET)を加味したVCMクリアランス(CLVCM)予測式として、CLVCM(PET)式およびCG式を用いたCLVCM(CG)式の有用性を調査した。固定パラメータVdを1.07 L/kgと仮定し、1-コンパートメント急速静注モデルで各予測血中濃度を算出した。CLVCM(PET)式では残腎とPDのクレアチニンクリアランス(CLcr)を用いCLVCMとCLcrの違いを補正して、CLVCM(PET) =0.715×CLcr(R)+0.22×CLcr(PD)とした。CLVCM(CG)式ではCLVCMがCockcroft-Gault(CG)式で推算したCLcrに0.789を乗じた値と等しいとした。CLVCM(PET)式とCLVCM(CG)式のME、MAE、RMSEはそれぞれME:1.5 μg/mLと-0.2 μg/mL(p <0.001)、MAE:3.8 μg/mLと3.5 μg/mL(p =0.35)、RMSE:5.2 μg/mLと4.6 μg/mL(p =0.20)であった。CLVCM(PET)式では88 %の測定値を、CLVCM(CG)式では79 %の測定値を実測血中濃度の0.67-1.5 倍の範囲で予測した。
検討した2つの方法は共に、PD患者におけるVCM初期投与計画時に有用と考えられるが、CLVCM(CG)式すなわち0.789×CG式の方がより実用的であると示唆された。