日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
8 巻, 2 号
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原著
  • 小林 綾子, 横山 登英, 石田 耕太, 鈴木 憲史
    2019 年 8 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/22
    ジャーナル フリー

    PD患者においてバンコマイシン(VCM)を投与した場合に個人差が大きく、血中濃度管理が困難である。そこで著者らはVCMを経静脈投与した39 例を対象に、腹膜平衡試験(PET)を加味したVCMクリアランス(CLVCM)予測式として、CLVCM(PET)式およびCG式を用いたCLVCM(CG)式の有用性を調査した。固定パラメータVdを1.07 L/kgと仮定し、1-コンパートメント急速静注モデルで各予測血中濃度を算出した。CLVCM(PET)式では残腎とPDのクレアチニンクリアランス(CLcr)を用いCLVCMとCLcrの違いを補正して、CLVCM(PET) =0.715×CLcr(R)+0.22×CLcr(PD)とした。CLVCM(CG)式ではCLVCMがCockcroft-Gault(CG)式で推算したCLcrに0.789を乗じた値と等しいとした。CLVCM(PET)式とCLVCM(CG)式のME、MAE、RMSEはそれぞれME:1.5 μg/mLと-0.2 μg/mL(p <0.001)、MAE:3.8 μg/mLと3.5 μg/mL(p =0.35)、RMSE:5.2 μg/mLと4.6 μg/mL(p =0.20)であった。CLVCM(PET)式では88 %の測定値を、CLVCM(CG)式では79 %の測定値を実測血中濃度の0.67-1.5 倍の範囲で予測した。

    検討した2つの方法は共に、PD患者におけるVCM初期投与計画時に有用と考えられるが、CLVCM(CG)式すなわち0.789×CG式の方がより実用的であると示唆された。

  • 土井 信幸, 森下 宙輝, 横塚 久代, 武智 洋一郎, 原澤 健, 秋山 滋男
    2019 年 8 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/22
    ジャーナル フリー

    一般用医薬品の消化器官用薬の中には胃酸を中和させる目的で炭酸水素ナトリウムが含まれているものがある。炭酸水素ナトリウムを摂取することで、食塩摂取と同様にナトリウムの摂取量が増加することから、炭酸水素ナトリウムを含有している医薬品の服用には注意が必要である。 本研究は、一般用医薬品の消化器官用薬に含有している「炭酸水素ナトリウム量の1日当たりの食塩換算量」を調査するとともに、登録販売者の来局者への情報提供状況などについて調査することを目的とした。

    セルフメディケーション・データベースセンターより炭酸水素ナトリウムを含有する製品を抽出し、製品毎に添付文書、製品概要などを参照し炭酸水素ナトリウム含有量から1日当たりの食塩換算量を調査した。登録販売者を対象に消化器官用薬に含有されている「炭酸水素ナトリウムとCKD」に対する意識や来局者への情報提供状況などについてアンケート調査を行った。

    一般用医薬品の消化器官用薬における炭酸水素ナトリウム含有量は1日食塩摂取制限量を3~6 gとした場合、最大1日量の27~53%となる製品も認められた。また、登録販売者がこれらの医薬品を販売する際「患者インタビュー」による服用歴の確認を行っている割合は79.2%であった一方、透析患者・CKD患者への情報提供や相談業務を行った経験については「無し」と回答した割合が81.8%と高値を示した。また、消化器官用薬に含有されている炭酸水素ナトリウムの量について気にしている割合は20.8%で、炭酸水素ナトリウム1 gが食塩換算で0.7 gに相当することの認知度は15.6%であった。

    登録販売者による患者インタビューは行われているものの、消化器官用薬に配合されている炭酸水素ナトリウムの食塩換算量への認識は低く、CKD患者への情報提供や相談業務に関わるケースは少ないことが示された。したがって、登録販売者向けの講習会や薬剤師会の研修、腎臓病関連の学会からの情報発信などを通じて登録販売者への啓蒙が必要であると考える。

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