日本鳥学会誌
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原著論文
心拍数を指標としたカワウに効果的な心理的ストレスの評価
山本 麻希桑山 大実鈴木 誠治高橋 晃周加藤 明子
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2012 年 61 巻 1 号 p. 29-37

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抄録

近年,カワウの個体数が急増し,捕食による内水面漁業被害が深刻化している.カワウによる食害を減じる手段として,河川にカワウを着水させないよう様々な忌避刺激が使われている.既存の忌避刺激の中で,どのような刺激が高い忌避効果を持つかを調べるため,心拍数をストレスの指標として,カワウに効果的な忌避刺激の評価を行った.忌避刺激を与えない時のカワウの安静時の1分間の心拍数は77 bpmであった.花火による刺激を与えた後には,257-310 bpmという高い心拍数が見られたが,連続して複数回刺激を与えると心拍数の上昇幅は低下し,カワウが刺激に対して馴化することが示唆された.250-10,000 Hzまでの周波数の純音を聞かせても,心拍数は安静時に比べ有意に上昇しなかったが,猛禽類の声やラジオ(262-264 bpm),ヒトに類似した視覚的刺激を与えた際(260-328 bpm)には有意な心拍数の上昇が見られた.本研究の結果から,一般的にカワウの対策に用いられている刺激は,カワウに一定の心理的ストレスを与えるが,同じ刺激を連続的に与えると刺激への馴化が生じることが示唆された.そのため,刺激の忌避効果が持続している間に刺激を交換する,忌避刺激と連動して恐怖の条件付けを行い刺激効果の持続時間を伸ばすなどの工夫が必要だと考えられた.

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© 2012 日本鳥学会
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