日本鳥学会誌
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原著論文
標識調査情報に基づいた2000年代と1960年代のツバメの渡り時期と繁殖状況の比較
出口 智広吉安 京子尾崎 清明
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2012 年 61 巻 2 号 p. 273-282

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抄録
 地球規模の気候変動が鳥類の渡り・繁殖に及ぼす影響の有無は,ヨーロッパや北米に生息する種について数多く報告されているが,アジアにおける報告は著しく乏しい.本研究では,大規模な気候変動が生じたこの50年の間に,日本に訪れるツバメの渡り時期,繁殖時期,繁殖成績が変化したかどうかを検討するため,1961~1971年の11年間(以下,1960年代)と,2000~2010年の11年間(以下,2000年代)の標識調査データを比較解析した.日別放鳥数の頻度分布において,成鳥の急増時期は2000年代の方が半月ほど早まったが,急減時期は変わっていなかった.幼鳥については,2000年代と1960年代の頻度分布はほぼ一致した.巣内雛については,急増時期が2000年代の方が半月ほど早まっていた.成鳥に対する幼鳥の放鳥数の比率は2000年代の方がやや減少していた.これらの結果は,ツバメの飛来時期・繁殖開始時期は2000年代の方が早まったが,渡去時期は両期間で変わっておらず,また繁殖成績は2000年代の方が低下したことを示唆している.飛来時期と繁殖開始時期については,調査環境や調査時期の影響も考えられるが,多くの既有の知見と一致することから,比較結果にはある程度の妥当性が判断された.一方,渡去時期や繁殖成績については,国土スケールの長期変動解析に有効な情報が他に乏しく,標識調査情報が重要なデータになると言える.
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© 2012 日本鳥学会
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