日本鳥学会誌
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原著論文
センダイムシクイの繁殖生態とツツドリによる托卵
川路 則友上沖 正欣川路 仁子
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2023 年 72 巻 2 号 p. 181-194

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抄録

北海道西部において17年間にわたり,センダイムシクイPhylloscopus coronatusの繁殖生態とツツドリCuculus optatusによる托卵を調査した.合計で135巣を発見したが,巣の位置では地上がもっとも多く(65.2%),次いで横向きに倒れたササの上に作ったもの(32.6%)であった.平均の一腹卵数は6.4で,先行研究より大きく,調査地の緯度によるものと思われる.平均抱卵期間は11.7日,平均巣内育雛期間は10.9日であった.センダイムシクイの巣内育雛期間のヒナへの給餌は雌雄で行い,給餌分担率は巣によるばらつきが大きかったが,全体ではメスの分担率の平均は巣内育雛前期で34.8%,後期でやや増加し45.5%であった.Mayfield法で算出したセンダイムシクイの抱卵から巣立ちまでの生存確率は0.411であった(抱卵期間で0.781,巣内育雛期間で0.526).巣内育雛期での被食率(33.6%)は抱卵期(13.0%)に比べ有意に高かった.ツツドリによる托卵率は平均16.3%で,2012年以降の11年間で0.0%~37.5%と年変動があった.発見されたツツドリの卵は,すべて赤褐色無地であった.センダイムシクイは,巣内のツツドリ卵やヒナを排除しなかった.ツツドリの平均抱卵期間は11.5日で,平均巣内育雛期間は16.3日であった.ツツドリの巣立ち成功率は36.4%であった.

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