日本鳥学会誌
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最新号
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原著論文
  • 川路 則友, 上沖 正欣, 川路 仁子
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 72 巻 2 号 p. 181-194
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス

    北海道西部において17年間にわたり,センダイムシクイPhylloscopus coronatusの繁殖生態とツツドリCuculus optatusによる托卵を調査した.合計で135巣を発見したが,巣の位置では地上がもっとも多く(65.2%),次いで横向きに倒れたササの上に作ったもの(32.6%)であった.平均の一腹卵数は6.4で,先行研究より大きく,調査地の緯度によるものと思われる.平均抱卵期間は11.7日,平均巣内育雛期間は10.9日であった.センダイムシクイの巣内育雛期間のヒナへの給餌は雌雄で行い,給餌分担率は巣によるばらつきが大きかったが,全体ではメスの分担率の平均は巣内育雛前期で34.8%,後期でやや増加し45.5%であった.Mayfield法で算出したセンダイムシクイの抱卵から巣立ちまでの生存確率は0.411であった(抱卵期間で0.781,巣内育雛期間で0.526).巣内育雛期での被食率(33.6%)は抱卵期(13.0%)に比べ有意に高かった.ツツドリによる托卵率は平均16.3%で,2012年以降の11年間で0.0%~37.5%と年変動があった.発見されたツツドリの卵は,すべて赤褐色無地であった.センダイムシクイは,巣内のツツドリ卵やヒナを排除しなかった.ツツドリの平均抱卵期間は11.5日で,平均巣内育雛期間は16.3日であった.ツツドリの巣立ち成功率は36.4%であった.

  • 近藤 雅也, 日野 輝明
    2023 年 72 巻 2 号 p. 195-210
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    名古屋市内の都市公園である小幡緑地では,メジロZosterops japonicus,エナガAegithalos caudatus,シジュウカラParus minor,ヤマガラPoecile varius,コゲラDendrocopos kizukiの5種を主要構成種とする混群が観察される.エナガを対象とした混群の研究は多いがメジロの研究は少なく,混群で群れを誘導する,または他種に追従するといった混群内での役割については知られていない.本研究の目的は,混群構成種5種について,混群の構造や行動配分の変化および音声プレイバックに対する誘引反応を調べることで,メジロの混群における役割を明らかにすることである.調査地では,エナガを中心とした混群と,メジロを中心とした混群の2つのタイプが観察された.混群に参加することでメジロは警戒割合を減らし,警戒行動はエナガの個体数が多いほど少なかった.音声プレイバック実験では,エナガは同種の声にしか誘引されなかったが,メジロとその他の種はエナガの声に誘引された.したがって,メジロはエナガを含む混群では他種と同様に能動的中核種として,エナガを含まない混群では受動的中核種として行動すると考えられた.

  • 嶋田 哲郎, 山田 由美, 杉野目 斉, 澤 祐介, 土方 直哉, 時田 賢一, 佐藤 賢二, 鈴木 卓也, 本多 正樹, 太齋 彰浩, 阿 ...
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 72 巻 2 号 p. 211-222
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    志津川湾におけるコクガンBranta berniclaの行動圏と環境利用を解明するため,2019/20年と2020/21年の2越冬期に,コクガンにGPSロガーを装着して追跡を行い,固定カーネル法(95%および50%の行動圏を推定)を用いたコクガンの日中,夜間の行動圏,環境利用を明らかにした.行動圏の面積をみると,コクガン7個体で個体差がみられたものの,日中では95%行動圏で平均3,316.3 ha,50%行動圏で平均518.7 haであった.夜間では日中と同様な位置に行動圏が主に形成され,95%行動圏で平均9,480.1 ha,50%行動圏で平均1,965.5 haであった.行動圏の環境区分をみると,漁港に強く依存した1個体を除き,日中の95%行動圏,50%行動圏いずれも漁港区域,養殖区域,アマモ場が含まれた.この結果はこれまでの目視観察で明らかとなった採食場所と一致した.コクガンは漁港や養殖筏で海藻類を採食し,それらは湾内に広く分布する一方で,エネルギー量が高く,食物として価値の高いアマモ場は限られた場所に分布した.アマモ場では,アマモはコクガンによる採食可能な水深の範囲が限られたが,アマモ類の中で出現率がもっとも高かった.一方で,タチアマモはアマモより広い範囲でコクガンによる採食が可能であったが,出現率はアマモよりも低かった.希少種であり,ラムサール条約湿地として地域のシンボルのひとつである志津川湾のコクガンを保全するためには,漁港や養殖筏を維持しつつ,アマモ場を保全していくことが重要であると考えられる.

短報
  • 森 茂晃, 星野 由美子, 豊田 暁, 田尻 浩伸
    原稿種別: 短報
    2023 年 72 巻 2 号 p. 223-233
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    2020年2月に宍道湖に2万羽を超えるトモエガモAnas formosaが飛来していることが確認された.このトモエガモの集団は,朝と夕方に宍道湖を飛び立って湖外に飛行していた.飛行先を調べたところ,斐伊川中流域の丘陵林に降りていることが確認された.その丘陵林にはドングリが結実するカシ類があり,センサーカメラによってカシ類のドングリが落ちている場所で嘴を地面に向けている個体が撮影されたことからドングリを採食していたと考えられた.

  • 高橋 雅雄, 宮 彰男, 古山 隆, 三戸 貞夫, 日比野 政彦
    原稿種別: 短報
    2023 年 72 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    2022–2023年冬季に中国四国地方の107か所の湿性草原でオオセッカLocustella pryeriの越冬調査を実施し,5か所で計10個体を確認した.越冬確認地は広域的に分散し,地域的な偏りは特になかった.越冬確認地および越冬個体数は耕作放棄地が最も多く,大部分の越冬個体が中層ヨシ環境に生息していた.

  • 高橋 佑亮, 鈴木 透, 嶋田 哲郎
    原稿種別: 短報
    2023 年 72 巻 2 号 p. 241-246
    発行日: 2023/10/24
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    ドローンのローター音(回転翼による風切り音)がガンカモ類の忌避要因になっているのか検討した.録音したローター音をガンカモ類の群れに向かってオーディオで再生し,群れの反応を記録した.また,群れまでの距離を計測し,予め作成したローター音減衰モデルを用いてガンカモ類が聞いていた音レベルを推定した.その結果,少なくとも50 dB程度以下のローター音は,ガンカモ類の忌避要因にはならないものと考えられた.すなわち,ガンカモ類の逃避行動は機体の接近という視覚的な事象が主因となって生じるものと考えられた.ただし,大きなローター音であると,種によってはそれのみで忌避要因になることが示唆された.

観察記録
その他
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