日本の外来種の鳥類には飼鳥の籠抜けや意図的な放鳥由来と考えられている種類がある.外来鳥の野外での初見は,大正,昭和期(1910–1980年代)に多く報告されているため,飼鳥関連の情報を含んでいる雑誌の所在を調べ,これらの文献を用いて当時の飼鳥を取り巻く環境を調査した.大正,昭和期にかけては,趣味,副業,研究,投機等,様々な関心のもとに鳥類の飼育が盛んに行われ,40種類を超える多数の飼鳥雑誌が出版されていたことが分かった.さらに,戦争,経済恐慌を含む国内外の政治,経済の不安定さという社会的背景の中で投機目的による飼鳥の飼育,繁殖が増加し,飼鳥の値が急落した時に飼鳥の野外への逸出が多数発生した可能性が示された.大量に野外へ逸出して一時期繁殖していたことが記事上から抽出された種類は,現在は定着しておらず,いずれも定着リスクは低い種類であったと考えられた.