本稿では, 蓋然論理(probative logic)とはなにか, 特にその評価方法論的含意に着目して明らかにする。蓋然論理はマイケル・スクリヴェンの提唱する評価論理のキーワードの1つであり, 主に評価における専門的判断のあり方を分析・改善していく理論である。従って, 蓋然論理に関する理論的理解を獲得することは, スクリヴェンの評価論理に関するより詳細な理解や評価の中の専門的判断の方法論構築に資するものである。
本稿では, まず蓋然論理の問題設定を知るために, 蓋然論理の誕生の文脈である科学哲学, その中でも特に科学方法論に遡る。次に蓋然論理が着目する専門的判断とは, どのような特徴を持っているのか概観する。その上で科学方法論における専門的判断はどのような位置を占めているのか, 蓋然論理はその分析や改善にどのように役に立つのか検討する。最後に, 蓋然論理の観点から評価方法論について検討し, 特に構成概念妥当性という発想が持つ意義について議論する。