人口減少にあえぐ自治体にとって、地域振興の起爆剤となるような計画は非常に魅力的に映る。それは、たとえ「地域開発」や「外来型開発」(すなわち中央政府や大企業といった外部の主体に依存した自治体の開発計画)といった批判的な文脈で語られてきた言葉を思い起こさせるような手段であっても、である。なぜ「外来型開発」は批判されるのか。なぜ自治体は「批判すべき外来型開発」から逃れることができないのか。
本稿では、この問題を議論するため、ILCの誘致計画を事例として取り上げる。そのうえで、内発的発展や自立・依存といった地域開発をめぐる議論、政策のフレーミング、科学技術政策の多面性(山谷2019)をふまえて、ILCの誘致計画において岩手県が陥る問題の構造の分析を試みる。本稿の最終的な目的は、大規模研究開発と地域政策をめぐる問題の構造を明らかにし、科学技術政策の評価の難しさを指摘することである。