日本評価研究
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研究ノート
実践的判断のプロセスとしての形成的アセスメント
―J. デューイの価値評価論をめぐって―
西塚 孝平
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2021 年 21 巻 2 号 p. 117-130

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抄録

 近年の学校教育では、教授学習を改善するアセスメントの理論、すなわち形成的アセスメントの効果と有益性が叫ばれるようになってきた。しかし、理論形成に係る社会文化的視座が欠落しているがゆえに、理論的基盤の脆さと実践の適用可能性の狭さが批判されている。そこで本研究は、ジョン・デューイの価値評価論をめぐる考察を通じて、社会文化的な形成的アセスメントの理論的枠組みを提案することを目的とする。その結果、特定のコミュニティの歴史を受け継ぐ教師が、情動(欲求、興味、努力)を働かせながら、観察を通じて事実判断と価値判断を行い、目論見を打ち立てることによって、実践的判断としてのフィードバックを生成させるという説明モデルが得られた。実践的判断のプロセスとして定式化される形成的アセスメントは、個人の変容と集団の変革という終わりなき目的・目標と教育活動の間を架橋し、教育的価値の相対化を通じて学校教育全体を創造していくポテンシャルを秘めた、コミュニティによる文化的実践といえる。

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