日本評価研究
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21 巻, 2 号
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巻頭言
特集:持続可能開発目標の評価(SDGs)
  • 林 薫
    2021 年 21 巻 2 号 p. 3-4
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
  • Indran A. Naidoo
    2021 年 21 巻 2 号 p. 5-18
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    The Independent Evaluation Office (IEO) of the United Nations Development Programme (UNDP) plays a critical role in advancing the credibility of UNDP’s programme support and sustainable development. Providing an overview of IEO’s evaluation activities, this paper describes its mandate and approach in supporting accountability within UNDP and in building countries’ national evaluation capacities. Specifically, it suggests there is a need for investment in evaluation for greater development effectiveness at the country level. The paper illustrates challenges in linking national evaluation and Agenda 2030, and IEO’s initiatives to support countries in diagnosing their evaluation capacities. It suggests the efforts of the United Nations should focus on addressing institutional and process issues to accelerate evaluation capacities. To this end, the United Nations Evaluation Group (UNEG), as an interagency professional network, with its tools and expertise, should undertake advocacy efforts to advance the role of evaluation in the SDG follow up and review process.

  • 村岡 敬一, 日野 類子
    2021 年 21 巻 2 号 p. 19-30
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿は、国際的潮流、我が国のODAを通じた取り組み、開発途上国側の現状と課題の検討を通じて、SDGsの時代における評価能力構築を論じたものである。2030アジェンダの「誰一人取り残さない」理念とそれに基づくSDGsは途上国側の評価能力構築に加え、参加型評価等新しい評価手法導入の必要性を喚起するものであり、「課題」であると同時に「機会」でもある。開発途上国側で必要とされる評価能力構築に関する支援のニーズは膨大であり、開発途上国にとってSDGsの時代が「機会」となり得るためには、我が国を含むドナーの支援が不可欠であるといえる。

  • 測定可能性(measurability)から評価可能性(evaluability)へ
    米原 あき
    2021 年 21 巻 2 号 p. 31-46
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     SDG評価の特徴でありかつ困難のひとつは、抽象度が高く質的な、理念志向のターゲットが含まれていることである。本稿の目的は、SDG理念志向ターゲットの評価を捉える理論枠組みを提示することと、その枠組みに示される「ローカル‐形成評価」の実効性を検討することである。そのための方法論として、理論考察とアクション・リサーチを併用する。

     従来の画一的な定量指標では捉え難い理念志向ターゲットの登場により、測定可能性の追究から評価可能性の検討へと発想をシフトする必要が生じている。評価可能性を高めるためには、その国やその社会の文脈を考慮して、抽象的なグローバル目標を実践現場の活動へローカル化する手続きが必要になる。本稿では、SDG理念志向ターゲットの典型例であるSDG4.7のESDに注目し、公立小学校においてESD評価のアクション・リサーチを行った。その成果から、「ローカル‐形成評価」におけるセオリー評価の意義と役割が明らかになり、中でも協働型のマネジメントが実効性の鍵を握ることが分かった。

  • 林 薫
    2021 年 21 巻 2 号 p. 47-62
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     SDGs第7目標(以下SDGs7と略)は汚染の少ない現代的エネルギーの普及と利用の効率性を通じて持続性を高めることを目指している。人々が貧困から抜け出すためにはエネルギーの使用が不可欠である一方で、エネルギー供給は枯渇性資源に依存することがまだ多く、第7目標がSDGs全体の成否の鍵の一つを握っていることは言うまでもない。SDGs7は他の多くのSDGs目標の実現と関連性が強い一方で、目標横断的なセオリーをSDGsは示していない。そこで、SDGs7は他の目標あるいは持続性全体との関係でどのようなセオリーを描きうるのかを、本稿のリサーチ・クエスチョンとした。SDGs7が重要な指標の一つとするエネルギー・インテンシティー(Energy Intensity)は持続性に示唆を与える指標になりうるのか、また、目標の一つである再生可能エネルギーの導入はアウトカムとして人々の暮らしにどのような変化をもたらしているかについて検討を行うことを通じて、セオリーの構築を試みつつ、SDGs7の評価、さらにそれを通じたSDGs全体の評価の課題を明らかにしていきたい。

  • 江口 雅之
    2021 年 21 巻 2 号 p. 63-71
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     国連で2015年に採択されたSDGsの理念を反映すべくOECD-DACで約30年ぶりに評価基準が改定された。英語を原文とする新基準の定義で使われている用語は概念的なものが多いため、評価者は旧来の辞書的な固定概念にとらわれずに、用語の意味を正しく解釈した上で、適用するプログラムやプロジェクトの文脈に則し、適切に運用することが重要である。

     本論では筆者が注目する新規に導入された用語の解釈について考察し、その運用の意義を解説する。

  • アフリカの次世代企業家育成事業の事例報告
    長尾 眞文
    2021 年 21 巻 2 号 p. 73-87
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     新規事業を立ち上げる際の事前評価は、通常の場合策定された事業計画の内容や実行可能性を評価する目的で実施される。しかし、SDGs関連事業の中には分野横断的取組や判定の難しい質的成果を目指すプロジェクト等、新規の立ち上げに複雑な要因が絡むケースが増えており、計画の段階から評価的思考を明示的に応用する事前評価実施の必要性が次第に顕著になっている。本稿は、筆者自身が関与したアフリカの次世代企業育成事業の新規立ち上げに際し、J・オウエンの事業前評価(Proactive evaluation)のフレームワークを活用して計画と評価が同時進行する事前評価を実施した事例の報告である。事例から得られた教訓は、事業企画の初期の段階からステークホルダー対話を重視することの重要性と聞き取りやフォーカス・グループといった質的方法とワークショップのような集合的データ創出手段を効果的に組み合わせる可能性である。

研究ノート
  • 伊藤 健, 玉村 雅敏, 植野 準太
    2021 年 21 巻 2 号 p. 89-101
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     社会的インパクト評価は、社会的企業や社会的投資の文脈で発展したプログラム評価の手法の一類型として捉えられる。社会的インパクト評価は、これまでのプログラム評価等の取り組みにおいて蓄積された知見を、非営利組織による社会的事業や、企業活動や事業投資に対して適用し、その社会的影響に対する評価の手法として活用しようとするものであるが、その定義やプログラム評価との関連性について十分な整理がされてこなかった。社会的インパクト評価がその主たる評価の対象とする社会的企業や社会的投資は近年大きく拡大しており、今後の評価実践の中で大きな部分となることが想定される。本稿では、これらの社会的インパクト評価の取り組みがどのように形成されたのか、プログラム評価を中心とした評価研究のなかで、どのように位置付けられるのか、関連する事象を整理したうえで、これらの評価の実践と理論的発展が、評価研究にどのように貢献しうるのかについて考察する。

  • -成長戦略、大学のグローバル化及び日本語教育との関係からの考察-
    佐藤 由利子
    2021 年 21 巻 2 号 p. 103-116
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     留学生30万人計画は2019年に30万人の目標を達成したが、偽装留学生を増加したという批判も見られる。このため本稿では、上位計画である成長戦略や、大学等のグローバル化など主な方策にかかる政策文書や予算書の分析から、計画の政策的枠組みを確認し、その成果と課題を検証した。

     分析の結果、計画の主要な目的は「優秀な留学生の増加」と「留学生の国内就職」と特定され、その成果指標を分析したところ、大学等のグローバル化は英語コースを増加し、直接入学者の増加をもたらしたが、入学時点で日本語力を求めないという利点が日本就職促進上の課題となっていることが判明した。

     また、方策に入っていなかった日本語教育機関が、人数目標達成に大きく貢献したものの、優秀な留学生の増加は十分に達成されておらず、日本語教育機関に対する支援とモニタリングを拡充する必要性が示唆された。

  • ―J. デューイの価値評価論をめぐって―
    西塚 孝平
    2021 年 21 巻 2 号 p. 117-130
    発行日: 2021/09/30
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     近年の学校教育では、教授学習を改善するアセスメントの理論、すなわち形成的アセスメントの効果と有益性が叫ばれるようになってきた。しかし、理論形成に係る社会文化的視座が欠落しているがゆえに、理論的基盤の脆さと実践の適用可能性の狭さが批判されている。そこで本研究は、ジョン・デューイの価値評価論をめぐる考察を通じて、社会文化的な形成的アセスメントの理論的枠組みを提案することを目的とする。その結果、特定のコミュニティの歴史を受け継ぐ教師が、情動(欲求、興味、努力)を働かせながら、観察を通じて事実判断と価値判断を行い、目論見を打ち立てることによって、実践的判断としてのフィードバックを生成させるという説明モデルが得られた。実践的判断のプロセスとして定式化される形成的アセスメントは、個人の変容と集団の変革という終わりなき目的・目標と教育活動の間を架橋し、教育的価値の相対化を通じて学校教育全体を創造していくポテンシャルを秘めた、コミュニティによる文化的実践といえる。

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