日本評価研究
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ドラッカーによる成果重視の自己評価手法
評価領域拡大への示唆
田中 弥生伊永 大輔
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2003 年 3 巻 2 号 p. 87-107

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抄録

本稿は、P.F.ドラッカーの提唱する成果重視の自己評価手法のフレームワークと特徴を紹介するものである。ドラッカーの発想には、時々刻々と変化する環境へ対応することによって組織のイノベーションが可能になるという思想が根底にある。そのため、本評価手法は、マネジメントの改善のみならず、組織の使命やガバナンスの見直しを促すことを主目的としている。すなわち、自己評価手法はイノベーションとマネジメント改善のための手段として明確に位置付けられているのである。これらの特徴を浮き彫りにするために、成果重視を特徴とした評価手法として代表的なResult Based Management (RBM) と評価手法の比較検討を行う。RBMはPerformance Measurementによる業績情報の利用を取り入れた評価枠組みであり、事業効果の仮説と検証に基づく評価と捉えることができる。しかし、ドラッカーの評価手法は仮説の検証に執着せず、環境変化を察し仮説そのものを改変することを促している。この点はRBMのみならず従来型の評価と異なる特徴であり、そのため既存の評価領域を拡大する可能性を示唆しているといえる。

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